セルフケア: 無言のメッセージ(2) - 青信号から赤信号へ
2007-10-22更新
人から嫌なことをされたとき、又は対人関係で不快に思うことがあったとき、それを相手に嫌だと伝えるのは勇気もエネルギーもいることである。人によっては大変苦手で、特に感情を抑えることが美徳とされてきた日本人はその場を我慢してしまう人が多い。我慢できる力というのは素晴らしい能力で強い精神力を表すが、対人関係において多用するのは要注意である。不快さが相手に伝わらなければそれはOKのサインにもなり、同じことを繰り返しても大丈夫だとのメッセージになり得るからである。
ある会社でセクハラの被害にあってる女性がいた。セクハラとはとてつもないストレスを被るものである。彼女は仕事中上司と同じ部屋で同じ空気を吸うことに苦痛と吐き気を感じていたが、立場上、上司に苦情することをためらい何も言えないまま我慢していた。
上司はそれを、行為を続けてよい大丈夫な“青信号”と受け取ったようで、彼女がその後きっちり向き合って抵抗を示すまで少しずつ行動がエスカレートしていった。
また別の女性は結婚生活において夫から長年にわたりモラハラ(*下記参照)を受けていたが、子供のために「自分さえ我慢すれば」という思いで苦しい毎日を乗りきっていた。この場合、長期にわたって子供に伝わるメッセージというのはどういうものになるであろうか。
女性は精神的ダメージを受けても犠牲を払っても家族のため我慢するもの、男性はモラハラをしてもまかり通るもの、、、こういったメッセージが日々流れていってるとしたらどうだろう。
セクハラもモラハラもどちらも被害者は精神的にひどく打ちのめされるので、その中から立ち上がり、勇気を出して自分の気持ちを伝え行動を起こしていくことはとてつもなく多大なエネルギーを要する。
セクハラ、モラハラでなくても、対人関係、夫婦関係、家族関係の中で嫌なことを嫌だと言えないまま、無言のメッセージが自分の意思とは逆の“青信号”を送り続け、相手の行動を助長していることがある。
しかし、どんなに行き詰った状況にあっても、また人に向き合うことがどんなに苦手であっても、それを変えていく選択肢が必ずあることを知って頂きたい。
本を読む。図書館を使う。インターネットを活用する。自分と似た状況の人がどこからどのようにして抜け出していったか、一歩外の世界を知る。
同じような葛藤を持っている人が存在することを確認するだけでも救われるものだ。自分一人ではないという気持ちを持ったとき、私たちは元気づけられる。この段階では自分自身をEmpower=力づけるのが目的なので、元気づけるものであれば何でも良い。
その後で、専門家に相談する、カウンセリングサービスを利用する、ヒーリングを受ける、グループワークショップや講演会等に参加する、ブログやサイトで同じような人と交流する、、、などなど、できることから一つずつ始めてみる。そして少しずつ自分に知識と力をつけていく。
人に対面するのが苦手な人は、感情的にならずに冷静に自分の気持ちを伝えられるよう、その場を想定して声を出して練習したり、鏡に向かって練習したり、誰かに相手役になってもらって練習したりするのが良い。これをロールプレイと言い、その道の専門家やカウンセラーの助けを受けながらやると対面のテクニックなどを習うことができて一層効果的なものである。
法律相談やカウンセリングなどインターネットで専門家へのアクセスができる時代、突破口につながる糸口は案外自分の手に届くところにあるものだ。
自分の意思とはまるで逆に送られる青信号のメッセージ。これを赤信号に変えるようまずは意思表示をする。自分の持てるリソースをフルに使って、嫌なことを止める一歩を踏み出す。何かを求めてここを訪れているあなたならきっとできると私は信じる。
*モラハラ=モラルハラスメント。フランスの精神科医が提唱した造語で精神的な暴力、嫌がらせのこと。言葉や態度で精神的に人を傷つけ、被害者の存在や人格を否定する言動を繰り返すことにより、被害者を精神的に追いつめる。精神的虐待、精神的嫌がらせと言われる。英語ではEmotional Abuse.
(青木 貴美) →プロフィールはこちら