セルフケア: 無言のメッセージ (1)
2007-10-02更新
子供の頃、遠方に住む叔母一家が飼い犬のヨークシャーテリアを連れて、年に一度実家である我が家に里帰りで来ていた。その際いつも話題に上ったのが飼い犬の行動である。叔母が帰省する二週間以上も前からそわそわと落ち着きをなくし、何も知らないはずなのに旅行が近いというのを察するというのである。不思議だなあといつも皆で話していた。今考えてみるとそれはごく当然に思える。叔母にしてみれば何も伝えてないつもりでも、様々なレベルで平常とは違ったシグナルを発していたのだろう。
一家でしばらく家を空けるとなれば、出発に備えて用事が増え、まず日常の活動がそれまでより忙しく慌しくなる。それは叔母の神経を高ぶらせたかもしれないし、疲れを起こさせたかもしれない。犬と過ごす時間や接し方が多少変わっていったとしても不思議ではない。
また久し振りの帰省ともなれば興奮や緊張など、見えないところで感情が動き出す。こうした感情は声のトーンや大きさにすぐさま表れる。叔母が里帰りの準備を始めた時点で彼女の行動や態度に少しずつ変化が起き、言葉の通じない犬はその変化をより敏感に感じ取っていたのではないかと思う。
私たちは自分で気づかぬうちに、絶えずnon-verbal(非言語)のメッセージを出している。声のトーンの他にも、顔の表情、視線の交わし方、身振り手振り、ポーズ、人との距離の取り方、呼吸、洋服や髪型といった外見など、実はありとあらゆるところで自分の気持ちを表現している。
例えば、何らかの怖れや不安を感じる相手と向き合うとき、防衛本能から距離を多めにとって立ち、腕を組みがちだと言われている。嘘をついているときには罪悪感からであろうか視線を合わせず伏目がちになるという。怒ってないと口では言いながら、つんけんしたとげとげしい態度になるのは日本人に多い傾向とされる。
また、楽しいことや嬉しいことがある時には知らず知らずのうちに明るい色の洋服を選んでいたり、髪をきれいに整えたり、笑顔が増え声に張りが出るのは自然なことであろう。こうして人は常にたくさんのメッセージを送っている。
親子であろうが夫婦であろうが、人間関係において話し言葉と同じだけnon-verbalのメッセージが重要であるのは言うまでもない。あなたのメッセージを受け取る相手が小さなお子さんであれば、言語能力に欠ける分だけ非言語の重要性は大きくなる。
まずは自分がどういうボディーランゲージと口調を使っているか注意を向けてみよう。思わずあふれ出た涙から、ふと腕組みしている姿勢から、又はかん高くなってる声から、隠れていた自分の気持ちに気づくことがあるかもしれない。
自分が発している無言のメッセージに気づくこと。洞察力を高めることはセルフケアの大きな助けとなり、そしてコミュニケーションを向上させる一歩につながっていく。
(青木 貴美) →プロフィールはこちら