セルフケア:心に留まった話

2008-02-14更新
写真数年前のある夜、ふと夜中に目覚めたらテレビをつけっぱなしでリビングで眠っていたようで、ちょうどオプラ・ウィンフリー・ショー(注1)の再放送が始まるところであった。

こんなところで眠ってしまった・・・と思いながら、エネルギーに満ち溢れたこの昼番組のトークショーをぼんやりながめていると、その日のゲストはマヤ・アンジェロウという黒人のおばさんであった。

彼女は1928年生まれであるから私が見たこのとき76歳。彼女を見たのは初めてで名前も聞いたことがなかったのだが、オプラが彼女の大ファンのようで共演できたことをとても喜んでいた。

マヤおばさんはアンジェロウ博士と紹介され、著名な詩人、作家であり、歌手、俳優、演出家、舞踏家でもあるということだった。また1960年代には黒人解放運動において中心となった一人であり、これまでに数々の賞を受賞しており、クリントン大統領就任式では詩を朗読したという、、、素晴らしく多様な活躍ぶりであった。

しかしその偉大な肩書きよりも彼女に惹きこまれたのは、そこに存在するだけで周囲を魅了してしまう温かで情熱ある彼女の微笑みだった。

マヤおばさんがオプラのトークショーにやってきたのは、彼女が出版したばかりの「Hallelujah! The Welcome Table」というお料理本を紹介するためで、本には彼女のレシピとその料理にまつわる話が載っている。長い間ずっと彼女の作る料理のファンだというオプラが、マヤおばさんと一緒に番組でそのレシピと話を紹介していた。

ひとつめはレッドライス。メキシカンライスに似ていて、レッドビーンとお米を一緒に炊き込んだような赤っぽい見た目であった。

高校を卒業後3週間で未婚の母となったマヤが、実家を訪ねると必ずお母さんが作ってくれてよく食べていたそうだ。

生活のためナイトクラブやレストランで必死に働いていた20歳のころ、ある時それを食べていると、お米の一粒一粒にお母さんの愛をぎゅっぎゅっと感じる。食べれば食べるほどに感じる。

帰りがけ外へ見送りに出たお母さんが、マヤの背中を見送りながら不意に、「I think you are the most wonderful woman!」(注2)と言ったという。そのとき、マヤはなんとなくだけれど、『もしかして・・・私も何かになれるかも、、、私にも何かやれるのかもしれない。』と自分に可能性を感じたという。

そして『タバコをやめてみようかな。』ということから始まり、ひとつずつ生活を改善していったそうだ。それからのち様々な分野で才能を伸ばしていった彼女の、小さなきっかけとなったお母さんの言葉。その奥にある娘への信頼と愛情。ふと心が止まった話であった。

もうひとつ。

21歳のころマヤには好きな人がいた。彼の名はT.R. 彼のアパートには週2回通っていて、彼に夢中だったそうだ。

ある日いつものように訪ねて行ったら部屋の中から女性の声がする。ドアを開けてみると中から知らない女の人が出てきて、「あなたがマヤね。私はここに月・火・水と来るのよ。あなたは木曜と金曜でしょ。」と言われたそうだ。呆気に取られているマヤを横目に、彼女はそのままじゃあねと言って帰って行った。

彼に何も言えないでいると、彼が「こっちにおいで。」と言って、冷蔵庫からバナナプディングを出してきた。「これ彼女が作って持ってきたんだ。」と言いながら大きなサービングスプーンで食べ始め、マヤにも勧めた。(ここでマヤおばさんは客席に向かって「サービングスプーンで食べるなんてねぇ!」と言って笑った。)

マヤは結局何も言えず、勧められても一口も食べなかったそうだ。T.R.の食べるそのバナナプディングは「カスタードがどろっと流れて何とも見かけがひどかったのよ」と、番組で笑いながら言っていた。

そしてT.R.の部屋を出て帰り道、まっすぐ食料品ストアに寄ってバナナプディングの材料を全部買い込み、家に戻ってから早速作って息子と食べたそうだ。

彼のアパートで勧められたものとは違い、マヤの作ったバナナプディングはそれはそれは美しくておいしかったそうだ。そしてその後二度とT.R.と会うことはなかったという。

こうして続くマヤおばさんの話を聞いてると、いつのまにかあったかい気持ちに包まれていた。彼女の気負いのなさ、力みのなさ、ユーモア、生活を楽しむ明るさ、はつらつさ、そして豊かな感性。

夜中に一人でふと目覚めて、私は孤独の中で宝物に出会った気分になった。そして、愛情を込めて美味しい料理を作りたいと思った。

2月14日はバレンタインデーですね。皆さんがたくさん愛を感じる日となりますように。 ニューヨークよりHappy Valentine’s Day!

(注1) アメリカで非常に影響力を持ったセレブリティの1人として知られている黒人女性、オプラ・ウィンフリーがプロデュースし司会する昼間のトークショー番組。女性からの支持が高く常に高い視聴率を稼いでいる。オプラ・ウィンフリーはその他に俳優、雑誌編集者、慈善事業家など幅広く活躍し、資産家でもある。南部の貧しい小さな田舎街に生まれ、辛い少女時代を送ったことを公表している。(Wikipediaより)

(注2) 上手く訳せないので英語のままにいたしました。
(青木 貴美) →プロフィールはこちら
自己開発バックナンバーはこちら

お知らせ

  • 普段書けないお母さんへの手紙を書いてみませんか?そして送ってください。書くことで解決されることも多いはずです。できるかぎり紹介していきます。わだかまりが解けるきっかけになるかもしれません。
    tomama@lfelicia.com (2008/1/4) mommiesbehappy.com
  • お子さんが書いた絵本やお話を募集しています。
    ehonsakka@lfelicia.com (2008/1/4) mommiesbehappy.com